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<心理カウンセラー>二つの国家資格に相談者も混乱 医療や教育現場などで心のケアにあたる心理カウンセラーに、二つの国家資格が誕生する可能性が出ている。医療スタッフの一員に位置づける「医療心理師」と、医療に限定しない「臨床心理士」(いずれも仮称)。それぞれを支援する超党派の議員連盟が、5月中に衆院厚生労働委員会と文部科学委員会へ法案提出を目指す事態になっている。似たような資格が立場の違いによって分かれた場合、カウンセリングを受ける側が混乱することになる。
心理カウンセラーの仕事現場は学校、病院、児童相談所、家庭裁判所など幅広い。年間3万人の自殺者や学校での事件などの対策で、人材確保は急務となっている。だが国家資格はなく、よく知られた臨床心理士も「財団法人日本臨床心理士資格認定協会」が認定する民間資格に過ぎない。
このため、医療現場から「法的位置付けがないとカウンセリングが診療報酬の対象となりにくく、積極的な取り組みができない。人材流出も深刻だ」との声が出ていた。また、法的な守秘義務がないことも課題となっていた。
提出の動きがあるのは「医療心理師法案」と「臨床心理士法案」(いずれも仮称)。
医療心理師法案は、医療現場のカウンセリング業務を充実させるのが狙い。受験資格は4年制大卒業者で、医師の指示の下で診療報酬を得て業務にあたるとしている。2月に日本心理学会など23団体を背景に自民、公明、民主73人の国会議員が議連(会長・堀内光雄元通産相)を結成。既に法案骨子もまとめ、来月厚労委への提出を目指す。
一方、臨床心理士でつくる「日本臨床心理士会」(会長・河合隼雄文化庁長官、約1万1000人)は「幅広い国家資格を」と陳情活動を展開。与野党5党の30人が発起人となった議連が19日に発足する。受験資格者を大学院修士修了とし、現行の指定校制度を廃止し門戸を広げる考えだ。医療心理師法案とほぼ同時に、文科委への提出する方針だ。
医療心理師資格の創設を目指す鴨下一郎衆院議員は「提出時期の歩調を合わせることは必要だが、資格は二つ必要だ」。対する立場の中心メンバーの河村建夫・前文科相は「19日に法案骨子を示したい。だが二つの資格には内閣法制局も難色を示す可能性があり、一本化できるか論議を続けたい」と話している。【青島顕、西脇真一】
(毎日新聞) - 4月16日3時5分更新