asahi.com: 人気の独外相に批判の雨、1位の座陥落 ビザ緩和責任問われ?-?ドイツ年特集 「ドイツで最も人気のある政治家」として知られるフィッシャー外相(56)が、批判の集中砲火を浴びている。内外の警告を無視してビザ発行条件を緩和し続け、大勢の犯罪者や売春婦らの入国を許した責任を問われている。追及は野党やメディアだけでなく、支持者からも上がり、連邦議会は特別委員会を設け、本格調査に入った。3年間保持した有力調査会社の「人気政治家ランキング」首位の座からも陥落。盟友であるシュレーダー首相も政権の「顔」の思わぬ失点に、頭の痛い状況だ。
発端は00年3月に実施したビザ発行条件の緩和。外国人観光客を増やすため、厳しい審査を経ずに観光ビザが出されるようになった。01年の発行数は前年と比べウクライナが2倍、モルドバが1.9倍、ロシアが1.3倍に急増した。
複数の地元紙によると、ビザ取得者はマフィアなど犯罪組織が送り込んだ売春婦やヤミの労働者が多く、こうした人たちが関与した犯罪が最近になって急増した。また調査の結果、実体のない保険が有効とされたり、受け入れ人がホームレスだったりするずさんな審査も明らかになった。
条件緩和の直後から、シリー内相は治安悪化を考慮して審査の厳格化を要求。申請者が殺到したウクライナの大使館は実態調査を求め、近隣国も再三疑問を寄せた。外務省は03年4月、再び条件を厳しくした。
外相は「対応が不十分だった。反応も鈍かった」と謝罪したが辞任は否定。シュレーダー首相も擁護している。だが最大野党キリスト教民主同盟(CDU)のメルケル党首は「過去の大臣はもっと小さな問題で辞任した」と批判。外相が所属する90年連合・緑の党では、幹部は表だった批判を避けているが、「きちんと判断すべきだ」(男性党員)といった声が高まっている。連邦議会の特別委は外相の尋問を検討している。
外相は日本の中学、高校にあたるギムナジウムを中退後、左翼運動に加わり、街頭デモを指揮したりした。転々と職を変え、工場労働者、タクシー運転手、ポルノ映画の翻訳経験も。市民運動から発展した党の論客として頭角を現し、83年に連邦議会議員に当選。98年から外相。
問題発覚後、「人気ランキング」首位の座は、CDUの次期首相候補の一人であるウルフ・ニーダーザクセン州首相に譲った。